走馬灯予行演習

誰にも言えない君のそんなところが好きだったよ

 

愛は質より量だ。どんな形でもほんの一瞬でも永遠の愛とか誓ってくれなくても君が欲望を満たしたら私に見向きもしなくなってもいい。今日に至るまでどれだけ愛してくれていたかが重要だ。

 

彼の愛はいつも一瞬だった。家に帰ったら私のことなんて思い出さないんだろうなって思えるような、それでいて駆け抜けるような愛だった。寝ても覚めても彼のことを考えていた私の世界はずっとのろまで、この恋が終わったら世界が100年くらい進んでしまっているのではないかとさえ思ったことがある。足の遅い私は彼と一緒に走ることなど最初からできなかったのかもしれない。

 

私がInstagramの親しい友達に彼の話をするとき、彼のことは👦🏻と表示していた。iPhoneのユーザー辞書で“ぴ”と打つと👦🏻と変換されるようにしている。すきぴ、なんて嬉々として言えない私の最後の可愛げでこの一文字を選んだ。

 

すきぴ、というのは、彼氏→かれぴ

に対して好きな人をそう呼ぶものだと思っていたから私のぴ、なんてチョイスは所詮誰かのパクリで、ぴどころかハ行の文字すら入っていない👦🏻の名前を思い出した。どんな漢字だったのか一瞬分からなくなってしまった。何の気なしに打つと彼の漢字もユーザー辞書に登録されていて、どうしてか目を背けたくなったからその3文字を消した。結局使った覚えのないその漢字を忘れてしまってもぴだけはずっとぴとしてこびりついていてほしい。

 

名前も思い出せなくなるならそろそろ潮時かなあ、とか考えたりもしたけどビビンバ屋で待つときに出来心で彼の名字を書いたあたりまだまだこれは続くのだと思う。早く気持ちよくなりたいね。