走馬灯予行演習

誰にも言えない君のそんなところが好きだったよ

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愛でるもののない生活はつまらない。全てを終わらせた。勝手で一方的で暴力みたいな愛し方しかしなかったけど彼には傷一つつけられなかった。彼が5年後に私を思い出すことはないんだろうなと思って悲しくなった。

 

本当はこんなことをしている場合ではないのに、というときほど文章を書いてしまう。逃げ続けている。彼からも課題からも友達からも逃げ続けている。後手で打った銃が当たる確率なんてほんのわずかなのに殺したくて撃ち続けている。ぬるま湯みたいな恋だった。気持ち良くて、気づいたらのぼせ切った赤い顔でヘラヘラとそこにいた。ずっと浸かっていたかった。どこかで彼とは付き合えないだろうということも彼が私を好きになることもないだろうということもわかっていて、それでもいいと思っていた。甘い考えだと自分でも思う。ダサい惰性で今日まできた。始まりがぼやけているように恋の終わりもまたぼやけていて、何も見えないまま気づいたら終わっていく。

 

私が泣いた夜にインターネットは死んでしまった。連絡は待てど暮らせどこなくても、それでも待つことすら楽しくて仕方なかった。変な語尾も汚い日本語も許せた。今思えば大して面白くない話も、君が時々こっちを見て笑ってるか確認してくるからそこまで面白くなくても笑うしかなかった映画も、測ってくれた脈も、寄ってみたいと教えてくれたけど結局行くことはなかったトンカツ屋も、阪和線の向かいのホームも、わざとはぐれたユニバのホラーナイトも、私がまくってあげたちょっとダサいシャツの袖口も、君を守りたくて1番に占うのにそういうときに限っていつも君は人狼で仕方なく殺した人狼ゲームも、きみの一口大がバカみたいにデカかったインドカレー屋のナンも、1人真剣に続けるディアボロも、きみだから全部全部全部全部壊したくなるほど大切だった。愛とか恋とか難しいから一度覚えたら忘れるなんてもったいなくてできない。したくない、の方が正しいけど誰も咎めないからできないことにする。不可抗力の終わりだったのだと思えれば楽だからできないことにしておきたかった。

 

108個に絞れない君への思いをひとつひとつ殺していく。さよなら、まっさらなまま傷一つなくいてください。ああどうかお元気で。私以外の手で血塗れにならないでね。いつまでもぴかぴかのあなたでいてね。君のこと2018年から好きだったのわけわかんない。それでもわたしはきみの神さまになりたかった。